目次
2. フィードバックとデザインの間のギャップを縮める
3. 使い慣れたエコシステムと直感的なワークフロー
はじめに
Black Diamond Equipment社はもう何十年も、斬新な登山やスキー用具を作り続けています。着 心地の良さ、耐久性と性能の高さで知られるBlack Diamond社の製品はいずれも、厳しい設計工 程、試験や反復検証を経て、商品化されたものです。
同社はこれまで、登山用ヘルメットから非常用具にまで至る全品目の実寸大のプロトタイプの製作 を外部に委託していました。商品化を検討する過程で製作するプロトタイプを実物大にするのは、 同社のプロダクトデザイナーやエンジニアが、実際に人が着用した時の状態を確認しながら設計 改良を加えていけるようにするためです。同社はこのようなプロトタイピングを続けてきたことが、 発売当初から確実に広く受け入れられる高性能製品を開発できる大きな要因の一つです。しかし、 実寸大のプロトタイプの製作をサードパーティに外注すると、納品まで時間が掛かるため、イノベー ションのスピードが鈍る(また同時に製作費も膨む)のも確かです。
そこでBlack Diamond社は最近、Formlabsが開発した大型フォーマット用の3DプリンタForm 3Lを、 従来の大型製造設備の数分の一の価格で購入し、実寸大のプロトタイプを社内で製作できるよう にしました。
同社では何年も前から設計工程に3Dプリントを採り入れてきており、すでにデスクトップ型3Dプリンタ のForm 2を4台使って、小型製品の実寸版や大型製品の縮小版のプロトタイピングを内製化しています。 しかし、これまではデスクトップ型3Dプリンタに備わっている標準的なビルド容積では、製作スペー スに限りがあるため、大型製品の実寸大のプロトタイピングは断念するしかありませんでした。そう した中でBlack Diamond社は、Formlabsがヒューマンスケールのプロトタイピングを可能する特大 のビルド容積を備えた光造形(SLA)方式の3DプリンタForm 3Lを開発したことを知りました。 Form 3Lのリリースは同社にとって正に朗報で、これまで断念せざるを得なかった大型製品の実寸 大のプロトタイピングを内製化して、イノベーションの幅を更に広げるチャンスが到来したと感じ ました。
Black Diamond社の研究開発部に所属する技術者のマット・テッズイは早速、Form 3Lの使い勝手 を確認できる、実践学習の場に身を置くことになり、そこでGrey ResinとTough 2000 Resinを使って、 この大型3Dプリンタで実寸大のプロトタイプを製作してみました。この先を読み進んでいくと、 Black Diamond Equipment社が大型のSLA 3Dプリント設備を社内に導入した真の理由が明らか になり、この戦略的投資活動が社内の製品開発にどのような影響を及ぼしているかを学ぶことが できます。